「60代から投資を始めても遅いのでは」と不安に感じている人は多いのではないでしょうか。
たしかに、20代や30代のように何十年もかけて大きく増やす投資とは、60代の資産運用の考え方は違います。ですが、だからといって「もう投資は意味がない」と決めるのは早すぎます。60代の資産運用で大切なのは、大きく増やすことよりも、老後資産を守りながら、年金だけでは足りない部分に備えることです。
金融庁は新NISAを、長期・積立・分散投資に適した制度として案内しており、つみたて投資枠120万円、成長投資枠240万円、年間合計360万円、非課税保有期間は無期限としています。こうした制度は、若い世代だけでなく高齢層を含む幅広い世代の長期・安定的な資産形成を支える趣旨で位置づけられています。 また、総務省の家計調査では、2024年の高齢夫婦無職世帯の実収入は月25万2,818円、消費支出は月25万6,521円、高齢単身無職世帯の実収入は月13万4,116円、消費支出は月14万9,286円でした。平均では、夫婦・単身ともに大きな余裕があるとは言いにくい家計状況です。
つまり、60代の投資は「今さら増やす」ためではなく、老後のお金をどう守り、どう持たせるか を考える手段の一つです。
年金生活の前提を先に確認したい方は、年金だけで生活できる?夫婦と独身の年金生活シミュレーションを解説 もあわせて読むと流れがつかみやすくなります。
- 60代からでも投資は遅すぎない
- 目的は「増やす」より「守る」
- 少額・分散・長期で始めるのが基本
この記事では次の内容を解説します。
- 60代から投資を始める意味
- 60代の資産運用で大切な考え方
- おすすめの始め方
- 避けたい失敗
- どんな商品や口座を選ぶべきか
60代の投資を「不安」ではなく「現実的な備え」として考えるための内容です。
60代から投資は遅いのか
結論から言うと、60代から投資を始めること自体は遅くありません。
ただし、若い世代と同じ発想で始めないことが重要です。
若い世代の投資は、長い時間を味方につけて積極的に増やしていく考え方が中心になりやすいです。一方、60代では退職や年金受給が視野に入り、使う時期が近いお金も増えます。そのため、60代の投資は「大きなリターンを狙う」のではなく、「預金だけに偏らず、インフレや寿命の長期化に備える」ためのものと考える方が現実的です。
実際、金融庁は新NISAを若年層だけでなく高齢層を含む幅広い世代の長期・安定的な資産形成を支える制度として位置づけています。つまり、制度の考え方自体が「60代は対象外」とはしていません。
「遅いかどうか」よりも大事なのは、
どんな目的で、どのくらいの金額を、どんな方法で運用するか
です。
60代の資産運用で大切な考え方
60代の投資では、若い世代以上に「増やす力」と「守る力」のバランスが大切です。
生活費に使うお金は投資しない
まず大前提として、近いうちに使う生活費や緊急予備資金は投資に回すべきではありません。資産運用は元本保証ではなく、相場の下落によって一時的に評価額が下がることがあるからです。特に60代では、使う時期が近い資金まで投資に回してしまうと、必要なタイミングで取り崩しづらくなります。
一括で大きく入れすぎない
退職金などまとまったお金が入ると、一気に投資したくなることがあります。ですが、60代の初心者ほど、一括投資よりも積立や分割で入れていく方が安心です。相場が高いタイミングで大きく入れてしまうと、その後の下落で不安になりやすいからです。
値動きに耐えられる商品を選ぶ
60代で資産運用をする場合、「いくら増えそうか」だけでなく、「値下がりしたときに持ち続けられるか」が重要です。自分が不安で眠れなくなるような値動きの商品は、向いていない可能性があります。
60代から投資を始める前に確認したいこと
60代で投資を始める前に、次の3つは必ず確認しておきたいポイントです。
投資の前に、まずは年金でどこまで生活できるかを確認する必要があります。厚生労働省の令和6年度概況では、国民年金の老齢年金受給者の平均年金月額は約5万9千円でした。日本年金機構が示す令和7年度の標準的な厚生年金額は月23万2,784円ですが、これはあくまで一定条件のモデル額です。
つまり、自分の見込額を確認せずに投資額を決めるのは危険です。
見込額の確認方法は、下記の記事で整理しています。

総務省の家計調査による平均は参考になりますが、本当に大切なのは自分の家計です。住居費、保険料、医療費、車の維持費などを含めて、老後に月いくら必要かを考えておきましょう。
年金や生活費を確認したうえで、10年以上使わないお金をどれくらい投資に回せるかを考えます。
老後資金全体の考え方から整理したい方は下記もご参考に。

60代におすすめの資産運用の始め方
60代の初心者が投資を始めるなら、次のような進め方が現実的です。
少額の積立から始める
いきなり大きく始めるより、月5,000円や月1万円といった少額から始める方が安心です。SBI証券は投資信託を100円から積み立てられると案内しており、少額スタートはかなり現実的です。
投資信託を中心に考える
60代の初心者は、個別株よりもまず投資信託から考える方が始めやすいです。1本で多くの企業や国に分散しやすく、個別企業の業績を細かく追わなくてよいからです。金融庁も新NISAのつみたて投資枠を、長期・積立・分散投資に適した一定の投資信託等を対象とする仕組みとして案内しています。
最初は商品を増やしすぎない
最初から何本も持つ必要はありません。
まずは1本で始めて、値動きや積立の感覚に慣れる方が、続けやすくなります。
新NISAの候補商品を具体的に見たい場合は、下記の記事へ。

60代におすすめしやすい投資先
60代で始めやすい投資先は、リスクを抑えやすく、仕組みがわかりやすいものです。
| 投資先 | 向いている人 | 特徴 |
|---|---|---|
| 全世界株式型の投資信託 | まず1本で広く分散したい人 | 日本・米国・欧州・新興国などに幅広く投資しやすい |
| 米国株式型の投資信託 | 米国中心で運用したい人 | 成長力に期待しやすい一方、地域は米国に偏る |
| バランス型ファンド | 値動きを少し抑えたい人 | 株式だけでなく債券やREITも組み合わせやすい |
| 高配当株 | 配当収入も意識したい人 | 値動きや個別企業の影響を受けやすいため初心者は慎重に選びたい |
全世界株式型の投資信託
日本、米国、欧州、新興国などに幅広く分散しやすく、「どの国が一番伸びるか」を細かく判断しなくてよいのが魅力です。最初の1本として考えやすいタイプです。
米国株式型の投資信託
米国中心で考えたい人には候補になります。ただし、全世界株式型より地域が偏るため、値動きや地域分散の考え方は理解しておきたいです。
バランス型ファンド
株式だけでなく、債券やREITを組み合わせることで値動きを抑えやすい商品です。値動きにあまり慣れていない60代には、考えやすい選択肢になることがあります。
一方で、最初から高配当株や値動きの大きい個別株に集中するのは慎重に考えた方がよいです。高配当株自体に魅力はありますが、初心者はまず投資信託の積立から始めた方が無理がありません。
60代の投資で避けたい失敗
60代から投資を始めるとき、特に避けたい失敗があります。
生活費まで投資に回す
もっとも避けたいのがこれです。
投資は、余裕資金で行うのが基本です。
一発逆転を狙う
老後資金が不安だと、「短期間で増やしたい」と考えやすくなります。ですが、高リスク商品に集中すると、資産を大きく減らす可能性もあります。
話題だけで商品を選ぶ
人気ランキングやSNSの話題だけで選ぶと、値動きに耐えられなくなることがあります。自分が理解できる商品、持ち続けられる商品を選ぶことが大切です。
老後資金全体の対処法を先に整理したい方は、下記の記事も参考になります。

新NISAは60代にも向いている?
はい、向いています。
ただし、「大きく増やすため」ではなく、「老後資産を守りながら育てるため」に使うのが向いています。
金融庁は新NISAを長期・積立・分散投資に適した制度として案内しています。非課税保有期間が無期限であることは、60代にとっても大きなメリットです。短期売買で慌てるのではなく、少額を積み立てながら長く保有しやすいからです。
また、60代の初心者にとっては、まずつみたて投資枠から考える方が自然です。成長投資枠は個別株にも広げられる便利な仕組みですが、最初から無理に使い切る必要はありません。
月1万円積立のイメージをつかみたい場合は、下記の記事も役立ちます。

証券会社はどう選べばいい?
60代の初心者にとっては、商品そのものと同じくらい、証券会社の使いやすさも大切です。
たとえば、
・少額で積立できるか
・画面が見やすいか
・投資信託を探しやすいか
・ポイント投資が使えるか
といった違いがあります。
| 証券会社 | 少額積立 | ポイント | 米国株 |
|---|---|---|---|
| SBI証券 | 投資信託を100円から積立可能 | ポイントよりも商品数や使い分けの広さが強み | 国内株・投信・米国株まで広げやすい |
| 楽天証券 | 投信積立に対応 | 楽天ポイント・楽天証券ポイントで投資可能 | 米国株や海外ETFにも対応 |
| マネックス証券 | 積立利用は可能 | ポイントより投資情報・米国株導線が強み | NISAでの米国株ガイドが充実 |
SBI証券は少額積立のしやすさが強みで、楽天証券はポイント投資の使いやすさが魅力です。マネックス証券は米国株への関心がある人に向きやすい特徴があります。証券会社選びで迷う方は、新NISAにおすすめの証券会社ランキング|初心者でも安心の口座を比較 を起点にすると整理しやすいです。
まとめ
60代から投資を始めるのは遅すぎるわけではありません。
大切なのは、若い世代のように大きなリターンばかりを目指すのではなく、老後資産を守りながら、必要な分を少しずつ育てるという考え方です。
そのためには、
・年金や生活費を確認する
・余裕資金だけを使う
・少額積立から始める
・投資信託を中心に考える
・新NISAを活用する
という流れが現実的です。
また、次に実際に投資するにあたり読んでおきたい記事は下記にまとめます。



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